日航機事故から23年目に展示された
所有者が特定できない遺品
墜落時刻を示したままの腕時計、ひしゃげた眼鏡フレーム、折れ曲がったボールペン……。日本航空(JAL)は11日、羽田空港の近くの「安全啓発センター」に、85年のジャンボ機墜落事故で犠牲になった人たちの遺品17点を展示し、公開を始めた。事故から23年。「忘れず、教訓にして」という遺族の思いが、ようやくかなった。
墜落現場から回収されたものの、持ち主がわからない遺品は約2700点。JALは当初、これらを焼却し、灰を慰霊施設に納めるつもりだった。遺族の反発で焼却は取りやめになったが、保存や展示を求める遺族の意向には応じてこなかった経緯がある。ある幹部は「『早く忘れたい』、という思いが働いた」と打ち明ける。
今回展示されたのは、腕時計5点、眼鏡フレーム3点、鍵3点、ボールペン2点、電卓1点、カメラのレンズ3点。JALが約2700点の中から「衝撃の大きさを物語るもの」を選んだ。残りについては写真をデータベース化して、同センターのパソコン画面で公開することなどを検討しているという。
時計の中には、表面のガラスがほぼ無傷で残っているものもあるが、いずれも、墜落時刻の午後6時56分ごろを示して止まっている。眼鏡フレームは原形がわからないほどゆがみ、電卓は液晶が激しく壊れ、配線の一部がむき出しになっている。JAL安全推進本部の酒井忠雄副本部長は「知識としてではなく、心で安全の尊さを感じ取って欲しい」と話す。
遺族でつくる8・12連絡会の美谷島邦子事務局長は「遺品を通じ、520人の方々が、その一瞬まで生きていたことを多くの人の胸に刻んで欲しい」と語った。
2008年8月12日
墜落した午後6時56分
ごろを指したまま止まった
遺品の時計
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折れ曲がった眼鏡 |
折れ曲がった鍵 |
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遺品の時計 |
折れ曲がったペン |
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